
チャンネル桜と、「李登輝友の会」を愛読する右翼の皆さんと、産経新聞、週刊新潮などが大騒ぎしています。この写真にNHKが「人間動物園」とキャプションをつけたことに対してです。
例えば、櫻井よしこ女史はこんな風に、
「この番組では、強烈なイメージを呼び起こす“人間動物園”という言葉を、当時の日本政府が使った言葉と錯覚するように使っている。全編がそうした“歪曲報道”の連続なのです」
しかしどうでしょうか?
NHKは櫻井よしこ女史がいうように、「当時の日本政府が使った言葉と錯覚するように使っている」でしょうか? そこの部分のナレーションを検証してみます。
――日英博覧会のガイドブックです。そこには、台湾の人々が、客の前で戦いの踊りをし、戦闘の真似事をすると記されています。当時、イギリスやフランスは、博覧会などで植民地の人々を盛んに見せ物にしていました。人を展示する、人間動物園と呼ばれました。日本はそれを真似たのです。
NHKの番組は、イギリスやフランスの「人間動物園」を真似た、といってるに過ぎません。ですから櫻井よしこ女史がいうような断定もどうかと思います。
問題は、当時の日本政府の博覧会関係者が、民俗文化に止まらない「人の展示」を積極的に行ったかどうかということです。もしそうであれば、「人間動物園 Human Zoo」という表現もあながち間違いないなあと思います。
ところで、永山英樹さんという人は、櫻井よしこ女史ほどアバウトではないようです。以下は週刊新潮記事からの抜粋ですが、多岐にわたるので番号づけをしました。
「たとえば、番組冒頭で“日本の台湾統治を象徴する”ものとして紹介された1枚の写真には“人間動物園”なる刺激的なタイトルが付けられている。そして、台湾の先住民族パイワン族を、日本政府は1910年にロンドンで開かれた日英博覧会に連れて行き(1)“見世物として展示した”と解説されるのです。確かに当時の西欧には、植民地化した土地の未開人を見せて金を取る人間動物園と言う見世物があった。 (2)しかし、この時にパイワン族が披露したのは伝統的な踊りや模擬戦闘。歌舞伎や相撲の海外興行と同じで、 (3)誇りを持って自分たちの技を披露しているのです。(4)同じ博覧会の写真でインドの人々は半裸ですが、パイワン族がちゃんと民族衣装を着けていることからも扱いの違いが窺える。NHKは“展示された青年”の遺族に“悲しいね、この出来事の重さ、語りきれない”と言わせていますが、 (5)写真だけ見せられて、“あなたのお父さんはロンドンで動物のような扱いを受けた”と言われたら、誰だって悲しくなるでしょう」 (週刊新潮4/23号)
永山英樹さんは、台湾研究フォーラム会長、日本李登輝友の会理事という要職の方だけに、なかなか、櫻井よしこ女史と違って分析的です。
永山さんは、ご自分のブログでは次のようなことを仰っています。
「最も視聴者にショックを与えたものと言えば、「人間動物園」ではないだろうか。」
としたうえで、
「視聴者は驚愕したことだろう。「日本人は(6)パイワン族を動物として扱い、無理やり連行して見世物にしたのか」と。そしてこれが「五十年間の日本の台湾統治を象徴しているのか」と」
まで仰っています。(ここにも番号をつけました)
さらに
「(7)日本人は台湾で、平地人や日本人への襲撃を繰り返す原住民への討伐は行ったものの、帰順をすれば教育を施し、近代国家・社会の一員へと導くことに並々ならない努力を傾注したのが史実だが、本当に彼らを「動物」として扱ったのか。」
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-740.html
私は、これらの永山さんの指摘に大いに興味を持ちました。そしてまず、NHKの番組のナレーションが永山さんが仰るようなものであるかどうか、もう一度確かめてみました。
――日英博覧会のガイドブックです。そこには、台湾の人々が、客の前で戦いの踊りをし、戦闘の真似事をすると記されています。当時、イギリスやフランスは、博覧会などで植民地の人々を盛んに見せ物にしていました。人を展示する、人間動物園と呼ばれました。日本はそれを真似たのです。
実は、永山さんがブログで紹介してくれた資料にその答えがあったのです。
『黄色い仮面のオイディプス―アイヌと日英博覧会―』
宮武公夫
http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/34083/1/115_PL21-58.pdf
宮武論文を読んでみますと、日本政府は1910年の日英博覧会では博覧会運営経費を稼ぐ手段として、「展示」とは別に「余興」を重視した、ということが手にとるようにわかります。宮武さんはていねいに政府文書を引用して、それを実証しています。
したがって、(1)に関してはNHKの落ち度はなさそうです。
次に、(2)と(3)です。
ご紹介の宮武論文をよむと、「余興」には、
一 会場内二日本家屋数軒ヲ建築シ其ノ内二於テ日本物品ノ製作実演ヲ為スコト
ニ 「パノラマ」的ナル我田園ノ模型
三 アイヌ村落
四 台湾蕃人ノ生活状態
五 本邦演劇
六 独楽曲芸,手品,山雀芸,水芸等
七 活動写真
八 要馬術
とあり、この三~八が、永山さんがおっしゃる「伝統的な踊りや模擬戦闘。歌舞伎や相撲の海外興行と同じで、誇りを持って自分たちの技を披露しているのです」に相当する分野です。
しかし、三 アイヌ村落 四 台湾蕃人ノ生活状態 が他とは違うことがあります。アイヌや台湾蕃人は、何か「演目」を演じただけには止まらないということです。
彼らは、展示場に24時間6ヶ月住まわされ、それを参観者に見せていたのです。どこか宿舎に滞在して、開場時間だけ博覧会場に出勤していたわけではありません。
24時間6ヶ月、観客に見られるために生きる―――そういう意味でそこは、確かに「Human Zoo」だったのです。そうして、「アイヌ」の人たちも「台湾生蕃」の人たちも、そうした状況の中でも誇りを失わないように頑張っていたに違いありません。
論文を引用しておきます。
「,「『アイヌ』村落(約900坪)及台湾部落(約1300坪)ニシテ 一ハ『アイヌ』部落ヨリ斉シ来リタル数個ノ茅家ヲ以テ部落ヲ構へ『アイヌ』人之ニ分居シテ其ノ生活ヲ営ムカ如ク設備シ 一ハ蕃社ニ模シテ生蕃ノ住家ヲ造リ蕃社ノ情況ニ擬シ生蕃此ノ処ニ生活シ時ニ相集リテ舞踏シタリ」というように,アイヌや台湾先住民の展示が行われていた。(農商務省1912;873) 」
次に(4)ですが、まずこの写真は「記念写真」です。展示場での写真ではないことを確認した上で、「台湾生蕃」が日常半裸生活をしてないなら、半裸展示をしないのは当たり前です。
(5)については、
NHKは、“あなたのお父さんはロンドンで動物のような扱いを受けた” と言ってるでしょうか?
NHKのナレーションは以下のとおりです。
―博覧会の会場で売られていたパイワンの人々の写真です。裏には、高士村から来た、と記されていました。展示された青年の息子、許進貴(85)さん。そして娘の高許月(79)さんです。父親の名は、チャバイバイ・プリャルヤン。チャバイバイさんは生前、博覧会について子供達に語ることはありませんでした。
高許月:
「(字幕)悲しいね。この出来事の重さ語りきれない」
「(7)日本人は台湾で、平地人や日本人への襲撃を繰り返す原住民への討伐は行ったものの、帰順をすれば教育を施し、近代国家・社会の一員へと導くことに並々ならない努力を傾注したのが史実だが、本当に彼らを「動物」として扱ったのか。」
私は、永山さんがもしもこのブログを読んでくださるなら、次のような質問をしたいと思います。
博覧会会場の中で、あるいは観客衆人環視のなかで、「余興」あるいは「見世物」として6ヶ月もプライベートな生活を送らなければならないことが、近代国家・社会の一員へと導くことへの並々ならない努力なのでしょうか? と。
永山さんが紹介した宮武論文の中に、台湾生蕃は2社(村)から24人が、1人の警部と1人の巡査の監督でやってきたことが、政府文書によって示されています。
「右ノ外台湾生蕃ニ就テハ総督府民政長官及ヒックス間二契約締結セラレ両社ノ生蕃二十四人警部一名巡査一名監督ノ下ニ二月十六日門司ヨリ乗船シテ渡英セリ」(農商務省1912;869-872)
ここでもう一度写真をみてみたいと思います。

ここには、台湾からやってきた24人のうち半数の12人が写っています。そしてもう一人・・・・・・


by kiyomaro
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